めぞん一刻/高橋留美子

めぞん一刻 (1) (Big spirits comics)

めぞん一刻 (1) (Big spirits comics)

全15巻(私は完全版なので全10巻ですが)。
後に「乱馬1/2」や「犬夜叉」を描く高橋留美子が、
SFや戦いものとは違う日常のドラマのみを、
高橋留美子らしいコメディタッチで描いた一作。
下宿アパート一刻館を囲む人々が織り成すストーリーは、
面白いながらもしっかり泣けます。


というか、高橋留美子は凄いな。
もう、どんなジャンルでも描けるんじゃなかろうか。
当時大ヒットしたうる星やつらとは全く毛色が違う。
キャラクターが立ってる点はともかく、
これほどストーリーに頼りきって描けると誰が思っていたのか。
特に後半、物語は未亡人である管理人の今は亡き夫への
どろどろとした感情だけを中心にうじうじと話が進んでいく。
はっきり言って、私(たぶん多くの女の人も)は響子さんが嫌いだ。
朱美さんが「ずるい」と言っていたのを思い出すが、
管理人さんは自分を好いてくれる五代君の気持ちを半分受け止め、
それでいて夫に操を立てるという名目で、
自分の気持ちには決着をつけないまま、時期を引き延ばしている。
明らかに、逃げている。
いかにも私が嫌いな女像。
なんだ、書いててむかついてきたよ。
ともかく、こんな本来読みたくもない感情部分を描いた漫画が、
何故か読んでで楽しいと思えるんだから、凄いは凄い。


というか、テーマに対して読後感があくまでサラッとしているのは、
途中にはさまれるアパート住民の惜しみない笑いのおかげです。
四谷さんの隣に住みたいな。あ、嘘です。


私は結婚したことも、まして夫が亡くなったこともないけれど、
人間はどうやっても一人でしか生きられないし、
生きている人同士でしか生きられない、それは確かです。
過去を背負って今を生きるのは、至極当たり前で、
それを認めなくちゃ恋愛なんてできないよ。