行け!稲中卓球部/古谷実

行け!稲中卓球部(1) (ヤンマガKCスペシャル)

行け!稲中卓球部(1) (ヤンマガKCスペシャル)

1993年よりヤングマガジン掲載、単行本全13巻。
累計発行部数2300万部という大ヒットギャグ漫画。
ある中学の卓球部を舞台に繰り広げられるドラマではない。
ただ個性的なキャラクター達が、そりゃもう迷惑なくらい迷惑を掛け、
画面いっぱい動き回り、印象的な言葉を多々残していく。そんな漫画。


って違うかな?とりあえず私にとってはこう。
私はこの漫画を単に「ギャグ漫画」と呼ぶのにひどく抵抗がある。
1〜3巻はともかく、それ以降の流れはシュールとしか言いようがない。
前野の考え方はいつも退廃的で、終末感に溢れている。
楽観的になりきれてないあたりの現実味は、怖いとすら思う。
「遠慮して生きてこーぜ」っていうのは何巻だかの帯の言葉だが、
後半のテーマはずっとこれ。
象徴的なのが6巻の「その69 不美人」。
一般に言う不美人が護身術を習っていて、それをやめさせようとする話。
私はたぶん稲中の中でこれが一番好きなのだけど、
2001年に古谷実が描いた「ヒミズ」を読むと、これが笑いでなくなる。
「オレは一生誰にも迷惑をかけないと誓う!
だから頼む!誰もオレに迷惑をかけるな !!」
ギャグ漫画家が次に激シリアスなものを描くことはよくあるが、
古谷実に関してはそれが顕著だ。
この人にはこのテーマを描き続けて欲しいな、と思う。
形がギャグであれ、何であれ。


ただ、私はやっぱり稲中が一番好きです。
いまだに湖を見れば「飲んでやる!」と言います。
最後2話で泣きます。
たぶん、そんな人間私だけ。