愛を込めて。

ちょっと前のYahoo!投票のページの質問。
荒川静香選手のイナバウアーに愛称をつけるとしたら?
一番多いのが「今までどおりイナバウアー」ってのが質問空回りで笑える。
というか「アラバウアー」って造語は荒川にもイナ・バウアーさんにも失礼だ。
ちなみに私が迷わず投票したのはもちろん「その他」。
レイバック・イナバウアー以外に思い付きもしなかったから。
しいて言えば「ユキナ・イナバウアー」と言いたい。

さて、問題です。以下の記録を持った2人の日本人選手が誰だかわかりますか?

(1)
2002年 ジュニアグランプリファイナル  優勝
2003年 世界ジュニア選手権       優勝
2004年 四大陸選手権          優勝

(2)
2001年 ジュニアグランプリファイナル  優勝
2002年 ジュニアグランプリファイナル  3位
2003年 世界ジュニア選手権       2位
2003年 ジュニアグランプリファイナル  優勝
2004年 世界ジュニア選手権       優勝
2005年 グランプリ・ロシアカップ    2位

ちなみにこれは最近の国際大会で表彰台に上ったものを書き出しただけのもの。(2)の選手が優勝した翌年、(1)の選手が優勝、またその翌年に(2)の選手が優勝。これが、日本の女子フィギュアは強いね!と言われる所以の記録の一部です。ちなみにそのまた翌年は世界ジュニア、ジュニアグランプリファイナル共に浅田真央が優勝。なんと凄いことよ日本女子。素晴らしい記録。


で、ちゃっちゃと答え合わせ。
(1)は太田由希奈、(2)は安藤美姫の大会記録です。
フィギュアファンなら有名なので誰でも知っている記録、しかし、最近のマスコミ情報でフィギュアを見ている人は太田由希奈を知っているのだろうか。知らないだろうな、うん。太田由希奈は04-05年シーズンを怪我のために欠場、また、05-06年の今シーズンも怪我の療養とスケートを続けるか否か検討するためにアメリカ留学し、一旦競技会から離れてしまった。昨シーズンと今シーズンは五輪に直接的に関係してくる重要な時期であり、その期間に大会に出ないことは五輪候補から名を遠ざけるのに十分な理由。その間に国内のフィギュアスケート熱がどんどん過熱していったこともあり、太田由希奈の存在は一般から見て無名と言ってもいい程に話題にのぼらなくなってしまった。


でも、だ。
よくよく考えると2002年ジュニアグランプリファイナルの時点で国内のフィギュア報道はよくわからなかった。日本のマスコミが騒ぎ立てたのは他でもない安藤美姫の世界初4回転サルコー成功の話題。世界ジュニアグランプリのタイトルよりも、結果3位に終わった選手の1ジャンプを過剰なまでに報道した。気付けばテレビ局は安藤をプリンセスミキ(いつからミキティになったんだろう?)とはやしたて、太田由希奈の記録は記録としては残ったものの、映像すら流れない状態では記憶として人々に残るはずもなかった。少なくとも私はテレビ等ではなくWeb上のニュースでしか「太田優勝」の文字を見ていない。これは2004年の四大陸選手権でも同じこと。報道はほぼなかったと言ってよい。フィギュアスケートはあくまでマイナースポーツ。オリンピックシーズンでもなくマスコミの過熱もない頃、ニュースバリューがなかったんだろう。それにしても偏った報道だこと。今じゃ浅田が失敗しようが2位だろうがどのチャンネルでも報道しまくるくせに。




こんなに書いた割には別に太田の記録がどうであっても特に興味はない。ってそれは嘘だな。興味はあるけど結果何位でも構わない。だってそういうスケーターだから。順位も採点も全く気にならない、それが太田由希奈のスケーティング。私の考える太田由希奈の理想の演技は、レイバック・スピンとイナバウアー、あとは上半身をたっぷりと使ってステップしてくれればそれで十分。4分間それならお釣りがくるくらい楽しめる。確か解説の五十嵐さんだったかが、太田由希奈が演技をしているときの肩、首、腕、腰など上半身の筋肉の使い方は他の誰にもない素晴らしいものだ、と言っていた。そうそう、と思った記憶がある。他の選手と同じように腕を振り上げただけで、何であんなにも綺麗だと思えるのかがわかった気がした。もともとのスタイルの良さに加えて、指の先まで神経が行き届いているあの感じ、他の選手ではいまだ見たことが無い。繊細でダイナミック、と書かれているのを目にするたびに納得する。太田の演技は格好良い。


いかんせんジャンプが苦手であり、噂ではあるけれど慢性的な怪我を引きずっているらしい太田。ジャンプが苦手というのは今の採点方式では大きな痛手である。これを乗り越えなければ大会での上位入賞は難しい。また太田の演技を見たいんだけどな。4月からの日本のアイスショーに出演が決まっているのだけど、荒川や村主が出演するショーだしテレビで報道されないかな?会場には行けないけれど、じっと待っているファンもいるんだぞー。しなやかにガッと滑る太田らしい華やかな演技が見たいぞー。


冒頭に書いたイナバウアーの話。私が初めてイナバウアーという技の存在を知ったのは2002年ジュニアグランプリファイナルの太田由希奈の演技。難しさなんて全くわからず、ただただ綺麗だと思った。こんな技があるんだ!という驚きも含めて、衝撃的だった。自分より年下の娘さんを「由希奈ちゃん」じゃなく「由希奈さん」と呼ぶようになったのはこの演技のせい。「ちゃん」付けなんて出来ないくらい、氷上で大きな選手。ので、最近荒川のことばっかり言われていじけそうです。技の美しさに優劣なんて付けるもんじゃないし、荒川のイナバウアーは太田の後に始めたんじゃないか!と言うつもりも(少ししか)ないけれど、ただ、くやしいなぁ、と。このときの曲目が同じく「トゥーランドット」だったってのもあるけれど、なんだか胸につっかえる感じ。もっと太田由希奈という選手の存在を知って欲しい。ジャンプ一辺倒の日本にも表現力で勝負ができる選手がいるということを。




何年経ってもフィギュアスケートにわかファンの一人が書いた文章なので、
他選手への中傷に聞こえるような書き方があることをお許しください。
嫌いなのはマスコミだけなのでそこを取り違えないようにお願いします。